あんたこの晩年をどう思う


自分には珍しく、劇場で映画鑑賞しました。それも二本。
備忘録的に感想を書いておきます。
(ネタバレあり)


一本目はこちら、
『アルツハイマーと僕 グレン・キャンベル 音楽の奇跡』
(原題 Glen Campbell: I'll Be Me)
概要は以下をご参照下さい。
https://eiga.com/movie/91497/

無題.png

もともとは他の作品目当てに劇場のサイトを見ていて
存在を知りました。
主人公はアメリカンポップス好きにはおなじみのシンガー、
そして高齢の両親がいる身としては気になるテーマです。
グレン・キャンベル本人はもちろんのこと、
彼の日常生活の多くの部分を支える妻が、カメラの前で
ありのままを語ります。


昔のフィルムに写る自身や子供が誰だかわからない。
持ち物を盗まれたのではと猜疑心にかられる。
自宅のトイレに行こうとして迷子。
歯に物が挟まったなど、些細なことに苛立ち癇癪。
ホテルの部屋からさまよい出て、各部屋のドアホンを押して回る。
薬の効き目か、以前より積極的に妻を求める(笑)。


悲喜こもごものエピソードを自分の親のケースと比較して、
「ああ、ウチと同じだな」「ウチはここまでじゃないな」
などと思いをめぐらせたりして。


こうした状況で長期ツアーに出ることはリスクを伴います。
ステージ上で失態があればキャリアに傷がつきかねませんし、
家族の負担も大きい。ただそれでもやるのは、本人の希望を
尊重したいためだと妻が語ります。
キャンベル家の場合は子供たち3人がミュージシャンとして
父のバックを務めることも支えになりましたし、もちろん
他のスタッフもサポートする。
病状は公表されているので、観客も時にハラハラの場面がある
ステージを暖かく見守ります。
グレン本人のキャラクター(それともアメリカ人自体の資質?)
なのか、病状が進行する辛さを自覚しながらもユーモアを交えた
言動が多く、そこは観ている側も救われるところ。


もう一つの視点として、ブルース・スプリングスティーンや
ジ・エッジ(U2)など、近親者に同病の患者がいる(いた)
ミュージシャンのコメントも挿入されるのですが、祖母や母も
アルツハイマーに罹っており、「次は自分の番だ。早く研究が
進んでほしい」と語る人もいて、我が身に置き換えてしまいました。
ちなみに他にもテイラー・スウィフト、キース・アーバン、
シェリル・クロウ、ポール・マッカートニーといった新旧スターも
チョイ役的に顔見せ。


で、こうしたある意味勇気ある行動は世間からも評価され、
キャンベル夫妻は請われて議員と会談します。
その議員によれば、今後患者数は増え、治療の研究には
アメリカの国防費に匹敵する額がかかるのだとか。
国民のためにはそのお金を、武器を買うのとどちらに使うのが
正しいのかと訴える議員の発言に、アメリカにも良心は
存在するのだなと感じさせられました。


2011年から1年半に及んだツアーは各地で盛況のうちに
幕を閉じ(グレンの状態を勘案しつつギリギリまで続けられた模様)、
2012年にはグラミーの特別功労賞も授与されました。
日常生活にも支障を来たす病状で長期ツアーを敢行できたことは
医師にも驚きだったようで、歌い、演奏することがいい効用を
もたらしたのだろうとのこと。副題に「音楽の奇跡」と
つけられた所以です。
そして迎えたラストレコーディング。
最後のものになるであろうことは、本人も周囲も感じていたでしょう。
身近な人々への感謝を交え、当時のグレンの心境をそのまま綴ったと
思われる歌詞、その字幕を涙なしに見ることはできませんでした。
2017年8月、療養施設にて永眠、81歳。
やれるだけのことをやった上での、安らかな最期であったと
信じたいです。


最終的には、アルツハイマーという状況を抜きにしても
夫婦愛、家族愛を描いたドキュメンタリーとして鑑賞できると
思った次第、老いた親を持つ方、またはすでに見送ったという方
にも一度ご覧いただきたい一編でした。
二本目の映画につきましてはまた後日。









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